まずは、少し前のこの記事から。
「シリコンバレーで嫌われる日本人」
日系企業関係者の訪問は「視察」や「情報収集」が主体で、事業への具体的な投資話に進まない。生き馬の目を抜く世界を生きるベンチャー経営者にとって、ビジネスに結びつかない時間がとられるのは「迷惑だ」というのだ。
2017年11月27日 産経新聞「ポトマック通信」
http://www.sankei.com/column/news/171127/clm1711270008-n1.html
痛いですねー。ぼくも一昨年(2016年)、ベトナムで同じような経験をしたことがあります。突然、日本の市会議員と某大学関係者、個人コンサルタントなどがぞろぞろスーツ姿で日本語学校にやってきて、「授業見学させてほしい」と。
ぼくは、学校のスタッフから急に言われて、理由も何も聞けないまま、授業見学に入られて、さらに授業の後、「Nuno先生、よろしかったら、ちょっとお話を聞かせてください。」と応接室に連れていかれ、忙しいのに、根掘り葉掘りベトナムでの日本語教育事情について聞かれることに。(ぼくからアポイント取ったわけじゃないんですよ、もちろん)
で、終了後、いつもの決まり文句 - 「今日はどうもありがとうございました。大変勉強になりました。今後ともよろしくお願いします。・・・」 「あ、はい・・・。」
このとき、名刺交換などしてしまったばっかりに、その後も何回かメールで追加の質問を受ける始末。さすがに学校のスタッフにそのまま転送して、ぼくは何もレスポンスしませんでしたが・・・、
Give & Takeじゃなくて、ただのTake & Take。相手の貴重な時間を奪っても特に悪びれることもない。この「甘えの精神」は一体どこから来るのでしょうか。
■ 企業までお役所化してしまった社会
結局、伝統的日本企業に根付いてしまった「ジャパン・アズ・ナンバーワン」時代の成功体験とビジネスの「お役所仕事化」がもたらしたものなんじゃないか、と思います。
必要以上に目の前の仕事に時間をかけても、まるっと会社全体のビジネスとして吸収されて、なんだかんだで売り上げが伸びていったという成功体験。
個々人が、責任を取りたくない、自分だけで決められない ⇒ 意思決定を細分化して、たくさんハンコを押すシステム(=〇〇課長はOKっていったの? 云々、というパターン)に代表される企業の官僚化。
この世代がもたらした悪しき風習。自ら変革の旗を降らないことで任期まで自分の身を守ろうとする役人マインド。
ここを破壊しない限り、これから世界の中で負け続け、嘲笑され、次の世代に希望を残せません。
■ じゃ、いっそのこと、生産性が日本の約1.5倍のドイツのような働き方をしてみたら、どうでしょうか?
2017年12月27日 RIETIで掲載された記事で、ドイツと日本の働き方の比較があって、なぜドイツは日本に比べて生産性が1.5倍もあるのか、の論考の中でこのような言及がありました。
「ドイツ人と一緒に働いてみて、その生産性の高さを肌で感じている。彼らは勤務中におしゃべりをしない。・・・終業時間が来るとさっさと帰って行く」「95%の完成度のものを、膨大な時間とエネルギーを使って98%にしない。むしろ創造的なことに時間を使う」「義務的な仕事を早く終わらせて、創造的なことに多くの時間を投じることに価値を見いだしている」。https://www.rieti.go.jp/jp/columns/s18_0006.html
特に注目したいのは、「95%の完成度のものを、膨大な時間とエネルギーを使って98%にしない。むしろ創造的なことに時間を使う」の部分です。
潔癖症さながらに、痛ましいぐらいにあまりにも全てに完璧を求めすぎて、余分な時間まで働きすぎる伝統的日本のワーク・スタイル。これが結局残業を生み出し、失敗を恐れすぎるあまり、決断せずに情報収集ばかりしているということにつながるのではないでしょうか。
95%の完成度でいい。と決めてしまえば、ずいぶん働き方が変わると思います。
残り5%の未完成(未知の)部分は、事前に吸収できない= 失敗ではない、徐々にアップデートしていくと腹を括ってしまえば、減点法マネジメントが変わってくるのではないでしょうか。
グーグル、アップル、アマゾン、マイクロソフトの新製品の完成度を見て、残り5%の未完成部分を責める人がどのくらいいるでしょうか。ユーザーにとっては「そこそこ満足できるクオリティのものを『いち早く』使えること」のほうが大事なんです。
悠長に情報収集のためだけの視察なんかしてる余裕はないんです。毎日、生産性とスピードのことを常に考えて、むしろ創造性を磨くための余白を作っていかなきゃいけないと思います。
だから、
- 視察厳禁
- 残業厳禁
- 減点法マネジメント厳禁
まず、これをルールにしてみたらどうでしょうか。
日本語教師も、95%の完成度でとにかく授業をやる。創造的な時間の余白を作るために必要以上の準備はしない。エンドレスな労働はしない。
これで教師はさらに健康になり、日々の授業がもっともっとクリエイティブになる「はず」です。じゃ、またーー。