大手外資系企業を退職して日本語教師になるということを決めて、そのことをおふくろに話したら、「えぇー!? 食っていけるの??」と言われたのを思い出します。
そう、別にことさら説明する必要もなく、事実、日本語教師は客観的に見て「給料が低い」専門職です。
例えば、いわゆる生活保護制度の下で支給される金額が、月額約14万円なわけですが、
給与で約14万円の手取りを受け取るためには、給与総額が月額約17万円、年額約200万円となります。「ワーキングプア=年収200万円以下」と言われることが多いのは、このような計算に基づいているからでしょう。
つまり、日本の基準に照らすと、年収200万円以下の社会人はワーキングプアとして定義されるということです。
日本の日本語教師のみなさんは、実際年収いくらぐらいなのでしょうか。
最近ツイッターで流れていたコマ給関連の情報を拾ってみると、大体1500円~2000円/コマというところが平均。ということは、仮にコマ給1800円で一日4コマとすると、
1か月フル稼働したとしても、1800円× 4コマ× 20日 = 144,000円
これって・・・、ワーキングプアじゃ・・・?
はい、そういうぼくも、もれなく今のセブの学校の給料だけで考えたら、ばっちりど真ん中の「ワーキングプア」です。海外だったら、尚更給料安いですからね。
参考までに、日本には1069万人のワーキングプアがいるとのことです。
(出典: 平均年収.jp –> http://heikinnenshu.jp/tokushu/workpoor.html)
■ 給料はコスト
ぼくは、最初日本のIT企業に就職してから転職を重ねて、外資系IT企業を3社経験しました。マーケティング職だったので、どの会社でも、いわゆるMarketing 4P (Product(製品)、Price(価格)、Promotion(プロモー ション)、Place(流通)) にどっぷり浸かった毎日を送っていたわけです。
中でも、製品のプライシングはかなり重要で、新製品投入時、またはキャンペーンの時に<他社に比べて価格優位性を提供しながら、利益も確保する>ということを常に考え、また、売上の状況によっては、価格改定等によって需給を調整しなければなりません。
それもこれも、会社のFinancial Planに全て紐づいていて、販売を通して得られた利益が会社を運営する原資となっているので(勿論、利益率や利益額は株価にも影響します)、会社は健全な利益額にかなりフォーカスするとともに、利益を押し上げるためのコスト削減に半永久的に取り組むということになります。
そして、言うまでもなく、従業員の給料やボーナスは、コストです。
これを日本語学校に置き換えてみても、全く同じで、教師の給料はコストですから、学校側としては、なるべくコストを抑えつつ、ビジネスを回していきたいということになります。
その結果、Financial Planを経て、学校が提示しているのが、コマ給1500円~2000円ということになるわけです。
ちなみに、
- 常勤講師(固定費)
- 非常勤講師(経費)
となり、需要に合わせて供給を伸び縮みさせられる、非常勤講師(経費)をより活用したいというのも頷けます。
■ なぜ日本語教師の給料が低いのか
日本語教師の給与額設定を、製品(サービス)のプライシングの面から考えます。それは、
<ユーザーにとって、妥当な額であると考えられている> ことに尽きます。
つまり、ユーザー(学習者)が、その製品・サービス(日本語の授業)を買うのに払う妥当な金額に基づいて設定されている、ということです。
じゃ、日本語学習のサービスを買うユーザーは誰なのか。
なぜこの仕事の所得が低いか、簡単に言えば、貧しい人* を教えることが多いからです。
* 貧しい人・・・というと語弊があるかもしれませんが、ここでいうのは、例えば日本の円と比べて為替格差や物価格差がある国の人々、発展途上国の国の人々などを指します。経済発展著しい中国や韓国であっても、日本円換算の一般的な平均月収等は日本よりも低い場合が多く、その他アジア圏の国々も、日本円換算の月収が月5万円以下の国などたくさんあります。JEGS International http://www.jegsi.com/archives/52319708.html
具体的には、
出典: JEGS International (http://www.jegsi.com/archives/52287860.html)
もう、おわかりですね。日本語学習者、特に来日して、日本の日本語学校に入学する学習者は発展途上国がマジョリティです。物価、給与水準が日本と比べ数分の一という国の方たちが日本語を学びに来ているわけです。
G8に代表される先進国ではありません。ドバイのお金持ちでもありません。
その中で、日本語教師の給料を一気にガーンと上げようとしてもそれはかなり非現実的で、発展途上国の学習者への負担(授業料)が増えるだけでなく、そもそもその高額な学校は学習者を獲得できないでしょう。
以前、エントリーでも書きましたが、ぼくがオーストラリアの法律事務所で日本語チュータリングを行ったときには、<無資格の>自分に、彼らはなんと1時間$100も払ったのです。日本の日本語学校のコマ給の約5倍です。
また、オーストラリアで通った英会話学校で、仲良くなった先生(20代後半)から聞いた話では、その学校の講師(専任)は、年収でだいたい600万円ぐらいと言ってました(2014年当時)。エビデンスがないので何ともいえませんが、給与レンジとしては大体そのあたりだろうと推測できます。
先進国は、相場が違うのです。
■ じゃ、この薄給で、どうやって食べていけばいいの?
日本語教師の仕事そのものは、本当にやりがいがあります。会社員時代の100倍楽しくて、ストレスは1/100です(少なくともぼくは)。
で、給料が低いとなると、やることは。ふたつ。まずは、
「お金面=日本語教師の給与額の増減という世界から、自由になること」です。
つまり、給与以外でも食べていける収入リソースを作っていけばいいのです。内容は人によります。自分がやりたいもの、自分にあったものを選べばいいと思います。
副業でもいいでしょう。投資でもいいでしょう。複数の収入リソースを持って、できれば、生活費を賄えるほどの不労所得があることが望ましいと思います。
これは、もう、今の時代、決して日本語教師だけじゃなくて、全てのサラリーマンにも言えることかと思います。収入リソースがひとつしかないことのほうがリスクなわけですから、ひとつひとつは小さくても、複数束ねれば・・、と考えた方が気持ち的にも楽になると思います。
二つ目は、「外国語を徹底的に磨くこと」です。
これは、給料が破格的にいい、先進国の大学の日本語学科等で働ける可能性へと近づきます。もしこれから大学院で学ぼうという意思があれば、その<日本語学科がある>目当ての海外大学院へ留学して、EducationのMaster Degreeなどをとってもいいと思います。
そして在学中からコネクションを作っておき、卒業と同時にそのまま同じ大学で勤務するというのは、本当によくある話です。当然ながら同じ大学の卒業生は就職面で優遇されます。
また、大学でなくても、語学力があれば、日本勤務の外国人駐在員に教えたり、オンライン講師に登録することもできるかと思います。いずれにしても勉強しておいて、損はないと思います。
■ 楽しく暮らしていきましょう
ついでに言えば、もし状況が許されるのなら、海外に移って「生活コスト」を下げて利益を確保するという考え方もあります。現にぼくが去年の夏ごろから住んでいるこのセブでは、普通に暮らしていて、月の生活費約3万円ぐらいでやれています。(※家賃は学校持ち)
生活コストがぐんと下がることで、心理的負担もかなり減るものです。
今のコマ給を50円でも100円でも上げるよう、学校と交渉することももちろん大事かとは思いますが、そこ以外の観点からライフスタイルをリニューアルしていくことを考えるともっと楽しくなってくると思います。
さあ、明日もいい仕事をしよう。じゃ、またーー。