効果的な語学習得方法として改めて「多読」に目覚めたこともあって、今年から日本語の授業でもReadingの割合を増やしました。
自分の英語、中国語の学習経験を通しても言えることなんですが、やっぱり読めないと、上達しないんですよね。聴くことと同じくらい、読む作業の言語脳への刺激とインプット効果は本当に大きいと思います。黙読も、音読も。速読も、熟読も。それぞれに◎。
ということで、初級からがんがんReadingを取り入れているのですが、今日はその真逆、文字を読まない(あるいは読ませない)発話練習に時間を割きました。これが結構得るもの大きかったんです。
■ コンテクストのある場面設定でのアプトプット練習は欠かせない
語彙や文型を積み上げていく教科書を使っている場合、学習者の脳がどうしても文型フレームワークや助詞の使い方を学ぶことに向いてしまって、口頭Q&Aなどでなかなかパフォーマンスを出せなくなるきらいがあります。
これは本当に自分も反省するところが多くて、講師側がかなり意識していないとこの「文型・語彙学習が目的化する」負のループに迷い込んでしまいます。
でも、王道中の王道、「言葉はシチュエーションの中でしか意味を成さない」とおり、場面場面でどうやって自分の言い方で発話目的を達成できるか、というアウトプット力が学習効果を図る肝なんです。いわゆるCan-Doですね。
定期テストは、単純に文型や文法をどれだけ「理解しているか」、語彙をどれだけ「覚えているか」を測る標準化メトリックでしかありません。
ですから、ちゃんとコンテクストのある場面において、自分の外国語脳にストックされた情報を使っていかに素早く文を作って発話できるか、というアウトプットのトレーニングをしておかないと、いざというときに会話ができないわけです。
■ 超シンプル、でも実際、確認できることが多い
ということで、定期テスト実施中の空き時間を使って、PowerPointでちゃちゃっと十数枚のスライドを作りました。1ページ1場面で、課題を達成する。文字は、背景を説明する簡単なものだけ。例えば、こんな感じです。
初級だけに、超シンプルですね。でも、これだけでも、アウトプット能力として、かなりのことを確認することができます。
例えば、
- ちゃんと「あのう、すみません」から、発話が始められるか。
- 知らない人なので、丁寧に聞けるか。
- 切符を買いたいんですが・・とか、切符の買い方が分からないんですが・・とか、前置きしてから尋ねられるか
などなど、意外にスムーズに言えなかったりもするんですよね。文法が正しかったからといって、または伝わったからといって安易に良しとせずに、数名にアウトプットしてもらってどの言い方が一番いいか、話し合ったりすることも重要です。
または、こんなタイプも。
一人の学習者にAになってもらって、日本語で発話⇒ Bの学習者が理由を言う(課題達成)⇒ それを受けてまたAさんがレスポンスする、というもの。
ここでは「バスが、なかなか来なかったんです。」という発話で、副詞の「なかなか」を言ってもらいたいところ。本人がだいぶ長い間待ったのなら、「全然」でもいいと思います。
また、超初級表現の「バスが<来ませんでしたから>。」よりは「バスが<来なかったんです。>」のほうがよりナチュラルなので、『~んです』が言えなかった学習者にはそれを促します。
■ みんなで画面を見ながら・・・ だから、いい
要するに、この練習の目的は、知識の有無ではなく、適切な場面でそれが瞬時に脳から取り出せて使えるか、ということです。
即時応答的に発話してもらうことで、
- こちら(日本人講師)がちゃんと聞き取れるか ⇒ 正しい発音の確認
- 文型や語彙、語順が正しいかどうか ⇒ 文法の確認
- その場面で適切な言い方かどうか ⇒ 言い回しの確認
ができるわけです。
しかも、みんなで画面を見ながら課題達成能力を競うので、かなり盛り上がりました。いいですよ、Can-Do千本ノック。
机に向かってじっと文字を読んだり、書いたり、から離れて、みんなで「文字を読まずに」文メイクしながら学ぶ時間の共有は、教室ならではの良さだなと改めて思いました。
じゃ、またーー。