少子化 ⇒ 海外エンジニア採用 ⇒ 日本語学習の需要高まる、という流れの予測

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少し前に、こんな記事を読みました。

2018年02月19日
日本語の能力は求めない!アジアのトップ校からIT人材採用広がる
2030年に約79万人不足、日本企業は選択迫られる

https://newswitch.jp/p/12077 (Newswitch/ 日刊工業新聞)

やはり日本にもこの時代が来たか・・・という感じです。世界を見渡しても分かるように、テクノロジーによって「暮らし全体がアップデート」され続けている現代、IT技術者の需要は高まるばかりです。

反面、記事にも書かれているように、少子化による日本でのIT技術者不足は深刻化していて、2015年時点で既に17万人不足していたと言われています(経済産業省による需給調査)。

また、未来の年表 (河合雅司著) によると、日本人のIT人材は2019年をピークとして、2020年からIT関連産業への就職者が退職者を上回るという調査結果が報告されています。需給ギャップの激しい拡大です。

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■ じゃあ、このIT人材不足をどうやって埋めるのか

そこで、企業が積極的に採用を広げているのが、海外、特にアジアからの優秀なエンジニアということです。先ほどのNewswitchの記事では、インド、シンガポール、中国、台湾などの工科系の大学生に注目が集まっているようです。

しかも、かなりいい待遇で採用されているようですね。ERP大手のワークスアプリケーションズでは、初任給年収600万円とのこと。去年も中国HUAWEIが日本の大学卒エンジニアに対して初任給月40万円を提示して話題になりました。

ITエンジニアは全世界的に完全な売り手市場です。特に少子化で需給ギャップが大幅に開いていく日本では、条件面を限りなく良くして優秀なエンジニアを『海外から調達しないと』全くビジネスが回らない、まさに死活問題なわけです。

■ 採用時の日本語の能力は求めない

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日本の会社で働くとなると、日本語のスキルが大きな壁になりそうですが、IT業界は日本語のスキルを度外視して、とにかく「優秀なIT人材」を求めるようになっています。それは、「ITの能力も日本語の能力も兼ね備えている外国人は滅多にいない(クラウド向けセキュリティサービス HDE社 副社長)。」からです。

よく分かります。日本語能力を持つことを優先していたら、そもそも母数が少なくなりすぎて採用そのものにつながらない、ということです。

また、ITというのはテクノロジーそのものがアメリカの企業中心に開発されていることもあり、IT用語は英語そのもの、そして日本語としても<翻訳されずに>そのまま略語やカタカナで使われているので、エンジニア同士であれば国籍が違ってもある程度意志の疎通ができるものなんですよね。

ぼくが勤めていた外資系企業の日本オフィスも、11か国の人たちが社員として働いていましたが、本当に英語がカタコトの日本人エンジニアでも「技術の話」であれば、外国人エンジニアと、そこそこコミュニケーションができているのを何度も見かけました。

ぼくたちが普段から使っている、ダウンロード、Wifi、セキュリティ、ログイン、サブスクリプションなどから始まって、IoT、BOT、ブロックチェーンに至るまで、全部英語そのままです。ですから、他業界に比べて「専門用語が世界で共通化されている」IT業界はボーダーレスで人材の流動性が高くなるポテンシャルを持っています。

■ それでも、日本語学習の需要は存在する。なぜか?

 

じゃ、日本語能力が求められずに採用されるんだったら、そしてIT業界で専門用語が世界共通言語になっているんだったら、この先その人たちは日本語を勉強する必要ないんじゃない?と思ってしまいますが、必ずしもそうではないと思います。

なぜなら、「企業である以上」コミュニケーションのための公用語が必要になるからです。企業で働くというのは、様々なコミュニケーションが求められます。大きな事業計画や方針の通達、事業部や部毎の日々のPDCA、人事に関する社内通達、倫理遵守や社員規範に関する社内教育など様々なコミュニケーションが勿論日本語でなされ、多少なりとも歴史がある会社であれば今まで蓄積されたノウハウやドキュメント、メールのアーカイブなども例外なく日本語がメインでしょう。

社外の日本の取引先や顧客とのコミュニケーションだって、まず間違いなく日本語でなされます。百歩譲って「お客さんとは会うことがない、社内でひたすらプログラミングだけしている」と言っても、社内の気心知れたエンジニア同士を超えたやりとりが発生した時点で公用語としての日本語が求められるはずです。

社員としてその会社に帰属した時点で、会社は社員一人一人をHuman Resourseとしてマネジメントしていく必要があるのです。組織として社員に求めること、社員が組織に要求すること、双方向で公用語の設定が必要です。

しかも、日本語能力を問わず中国や台湾から採用ということであれば、全ての企業内情報に対して「中国語併記」という途方もない労力が企業に課されることになり、それはそれで膨大なコスト増になるというものです。(社内の全メールに中国語併記が求められると想像してみましょう・・・あるいは英語併記でも・・・)

■ 日本語能力をつけることを「働きやすさが加速する」動機づけとして意識してもらえば最高

ですから、企業としてはこういう皮算用があるはずです。

  • 日本語能力が高い外国人で、+しかも ITエンジニア ⇒ 極少、非現実的 ▲
  • 日本語能力が高い外国人に、ITエンジニアの教育を施す ⇒ 論理破綻 ×××
  • 海外ITエンジニアを採用して、日本語教育を施す ⇒ あり得る 〇

ということで、とりあえず採用することで直近のビジネス要件を満たして、かつ中長期に働ける優秀な外国人人材であれば、3つ目のオプション、会社が日本語研修の機会を提供する可能性が少なからず考えられるわけです。

じゃ、ポテンシャルはどのくらいあるのでしょうか。

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平成27年(2015年)時点で36,522人の外国人が日本のIT関連企業で雇用されています。例えばざっくりとその10%が何らかの日本語学習を受けていると仮定したとしても、3,652人。

  • 1:1のプライベートレッスンで、3,652 コース
  • 1:5などのセミプライベートでも、730コース

が需要として創出されていると予想できます。また上記のグラフだと、直近の2015年時点で対前年比約5,000人(+16%) 増えているので、ここも10%仮定で毎年ベースで約500人の需要が作られていると推測できます。

しかも会社員であれば、昨今の働き方の見直しの機運から、終業時間後の<講師派遣による>会社での集合研修というのはあまり考えにくく、社外で、あくまでも個人のスキル習得のための「お稽古代」を会社が負担しましょうというほうが通りがいいため、プライベートレッスン(通学・オンライン問わず)の可能性が高いと思われます。

そうすると、それに従事する日本語教師の数も応じて求められてくるはずです。さらに日本での滞在期間が長期化すればするほど、配偶者やご子息への日本語教育の需要にもつながってくるかもしれません。

治安がよくて、清潔で、インフラが整っていて便利ということに加えて、日本語ができればもっと働きやすくなる、もっと暮らしやすくなる動機づけとして、日本語学習需要が増えていくと考えれば、昨今の日本企業の決断はいい方向に向くと思っています。

 

 

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