昨晩、語学の達人2人と23時まで語り合いながらしこたま飲みました。フィリピン人の日本語講師(N1保持者)と、セブで英語を勉強している日本語ペラペラ(ネイティブ率99%)の中国人の2人。
第二言語をほぼ完ぺきにものにした人たちの話は本当に面白い。もうひとつの新しい世界とクリアにつながったことで、一皮むけた世界観を持っているという感じでした。
ぼくも英語と中国語を話す日本語教師、ということで、当然ながら「語学はどうやって学んだらいいか」という話に花が咲きました。
そんな中で共通の認識を持ったのが「やっぱり語彙が一番大切だよね」という意見。そしてさらに、「語彙を定着させるのは簡単じゃないよね」ということでした。
■ 語彙が分かれば、意味が分かる
語彙を正しくつなげて意味を成す形に文をつくるためのルールが文法だとすれば、語彙と文法をバランスよく学んでいくことは重要なアプローチです。でも昨晩語学の先達たちと辿り着いた結論は、「100歩譲って、難しい文法をそんなに知らなくても、語彙を知っていれば、外国語はある程度理解できるよね」ということです。
確かに。
裏返せば、文型フレームワークや文法知識がそれなりにあったとしても、そこに乗ってくる語彙を全く知らなかったら(いくら文脈から推測しようとしても)理解するのはかなり困難です。
仮に知っている語彙が立て続けに聴ければ(あるいは文章から視覚的に入ってくれば)、それこそ意味を推測できる可能性はぐっと高まります。特に小難しい言い回し文法を使っていない限りは。
■ 語彙が分からないことが最も苦痛
今ちょうどカナダ、トロント大学の「Introducing the Psychology (心理学入門)10週間コース」をCourceraのMOOCsで受講中なのですが、専門用語が難しくて正直かなり苦労しています。
ネット配信用コースということで別段難しい文法は使っていないのですが、何しろ知らない語彙が次から次へと出てくるので全然頭に入ってこない。一時停止・巻き戻しができるからいいものの、留学してリアルに受講していたら相当ストレスがたまっただろうなと思います。
つまり、何が苦痛かと言ったら、語彙が分からないことです。
これをシンプルに初中級の日本語学習に置き換えてみると、もし聴解や読解で次から次へと知らない(あるいは未定着)語彙で埋め尽くされたとしたら、やはりとんでもなく学習ストレスになるだろうと推測できるわけです。
■ 何度も出会いながら繰り返す
じゃ、どうやって語彙を増やしていけばいいのか、そしてどうやって定着させていけばいいのか、ということになります。
ぼくたちが昨日辿り着いた結論のひとつは「その語彙にいろいろな場面でいろいろな形で、何度も出会うしかないよね。だって一度でその語彙を覚えようとしても覚えられないから。」ということです。
本当にその通り。例えば、N3レベルの語彙リストは総計約4,000あります。これをただフラッシュカードなどで一発で覚えていくのはよほどの記憶の天才でない限り至難の業です。
やはりインプットの総量がまずは必要です。教科書や教材におけるリスニング、リーディング、練習問題はもちろん、日本人あるいは日本語学習者との会話、自分の好きなコンテンツ(アニメ、まんが、ドラマ、小説など)を通して何度も何度も聴いたり目に触れたりすることで記憶を刺激して、文脈と一緒に定着を図るということです。
人の名前と同じようなものです。何度も会ったり何度も呼んだりすることでその人と名前の情報が一致してきてようやく覚えることができるだと思います。
■ 語彙を自分事のストーリーと紐づける
もうひとつは、自分で連想できるように、語彙を自分オリジナルのストーリーと紐づけるということです。これは漢字を覚えるときにも有効な方法かと思います。
今勉強している「心理学」の講座でもたびたび触れられていることですが、言葉(外国語)を学ぶときに、これからより脳科学や脳生理学を応用した学習方法が見直されてくると思っています。なぜなら、記憶や定着と脳は密接な関係があるからです。
例えば、「心理学」の講座でも紹介されていた、このビデオ。
- 記憶を改善し、脳をシャープにしておくための確実な25の方法
01 記憶を助ける工夫(書く、歌う、などなど)
02 情報を映像化する
03 深呼吸する
04 自分オリジナルのストーリーと組み合わせる(連想)
05 情報を日々繰り返す
06 読み聞かせ、音読をして耳を刺激する
07 子どものように遊ぶ
08 計画をたてる
09 集中する
10 からだを動かす
11 リラックス
12 酒、たばこ、コーヒーの飲みすぎなどを遠ざける
13 クラッシック音楽を聴く
14 歌詞を覚える
15 笑う(最良の薬)
16 においとともに覚える
17 覚えることに集中する
18 よく休み、よく眠る
19 簡単なことを繰り返しやる(難しいチャレンジにこだわり過ぎない)
20 新しいアートに挑戦する
21 チェスやトランプなどで脳をいつも鍛える
22 いい食事をする
23 いい人間関係をキープする
24 人に教えてみる
25 ストレスをなくす
ここでも「情報の映像化」と「連想するためのストーリー化」が上位の項目として触れられています。
何でもいいのですが、例えば、超初級の最初のころ覚える語彙でなかなか定着しない例。
- 図書館(としょかん)
- 郵便局(ゆうびんきょく)
ほんとうにやっつけ仕事でくだらないサンプルかと思いますが、今、ぱっと5分で英語話者のためにストーリー例を作ってみました。こんな感じです。
英語 [Library]と日本語の[としょかん]には言葉として、音として何の関連性もありません。そこを例えば、フィリピンでは一番の人気のスポーツ「バスケットボール」と組み合わせて、<ダンクシュート・コンプリートガイド>を読むためにLibraryに行った、とストーリー付けて、ダン・シュー・コン⇒ トショカン という連想を作ってみました。
また、[Post Office]も、お母さんが[Post Office]で仕事をしている間に、赤ちゃんの自分は毛布にくるまれている、というストーリーで、You’ll have been cocooning ⇒ ユウ ビーン コクーン から ユウビンキョク、とくに最初のユウ・ビンを思い出せれば、口をついて「ゆうびんきょく」が出てくる可能性が高くなります。
勿論、全ての語彙についてストーリーを作る必要はないと思いますが、覚えにくい語彙などは自分で手軽にイメージングできる映像や自分事のストーリーと組み合わせることで、より脳内記憶領域への定着を図ることができます。
ぼくたち日本人は国語として、郵便+局(役所の組織)という風に漢字とともに意味として覚えていますが、日本語学習は外国語学習なので、学習者にストレスを感じさせないおもしろい方法で工夫して、<一番重要な語彙習得>をサポートしていくことが必要だと思います。
それじゃ、またーー。