教室を一歩外へ出れば、そこはフィリピン、セブ島。ビサヤ語、タガログ語、英語が混じる本来の世界。生徒にとって教室の中が唯一日本語のシャワーを浴びられる場所。
先生もスタッフも生徒も全員ビサヤ語話者のフィリピン人。唯一の日本人であるぼくが授業に入るときが、学習者にとってリアルに母語(ビサヤ語)から日本語に切り替えられるときなのです。
だからこそ、貴重なこの日本人による日本語の授業をよりモティベーションのあがる、効果高いものにしたい。本当にこのことを<楽しみながら>日夜考えています。
今年に入ってから、クラッシェンのSLA理論を本格的に実践し始めて、現在ほぼ授業の50%をインプットに充てられるようになりました。あの手この手を使って飽きないように、なんとかインプット量を確保しようと試みている中、目に留まったのがこのオランダの小学校の記事でした。
■ ポップソングを使って英語を学ぶ、【非英語圏における英語力世界1の】オランダの小学生
94%がバイリンガルに!オランダ小学校の英語教育はここがスゴイ (2018年2月25日)
初等教育では文法習得目標はなく、「どのように必要な情報を(英語で)読み取るか」「分からないことをどのように(英語で)質問するか」「自分自身をどのように表現するか」「知らない単語にでくわした時どう対処するか」を学ばせる。(中略)
この小学校が導入しているメソッドは、「groove.me」というポップソングを題材に英語を学ぶという教授法だ。
楽しくて飽きない。知らず知らずのうちに日本語を聞く/発音の練習ができる。+ 前から感じていた、歌うのが大好きなフィリピン人・・・。
これだ! と思いました。従来のBGMとして聞く、タイトルや歌詞の意味を考える、ということではなく、本格的に教材として使い、授業に取り入れようと決めました。
↓ ちなみにオランダではこんな感じでやっています。
オランダの子どもたちでも一度は耳にしたことがあるような英語の曲を流すと同時に、歌詞をモニターに映しクラスみんなで合唱する。この時、気分が乗った子供たちが踊りだすことがあるが、それは全く構わない。この動画の中でも子供たちが「みんなで歌うと楽しくて、新しい単語でも覚えられる」と語っている。
そしてそれ以外にも、その歌詞で使われていた単語や言い回しを活用し、簡単な英文を学んだりもする。
■ どんな教材より「日本語脳」に切り替えられるかもしれない最強の教材 = 歌(J-POP)
授業で1日置きぐらいに5分~10分ぐらいとって、本格的に全員で歌詞を見ながら歌うようにしました(曲は中島美嘉さんの「桜色舞う頃」)。すると、大きく3つのことに気が付きました。
- 歌っているとき、表情がとてもリラックスしていて、旋律とともに100%日本語の世界に浸っている。
- 音節ごとの発音が日に日にクリアになってきている。
- 授業前後、休憩時間などにも自主的に自分たちでスマホで聴いたり口ずさんだりしている。
もし1曲でも、通しで歌える外国語の曲があれば、それを実際歌ってみるとよくわかります。(試しに何か今、外国語の曲を一節歌ってみてください。)その歌っている間は、【母語が入り込む余地はなく】、ただひたすらその外国語の世界に入り込んでいることを。
つまり、とてもリラックスした状態で<<外国語脳 = 学習者たちにとっては、日本語脳>>に切り替わっている可能性が大なのです。
スラブ語学者/言語学者の黒田龍之介さんも著書の中でこう書かれています。
外国語教育の経験から学んだことが一つある。それは発音をよくするのに、歌がたいへんに効果的であるということだ。
「外国語の水曜日 - 学習法としての言語学入門」黒田龍之介著
教科書の会話音源を聴く、聴解用音源を聴く、映像を見る、シャドウイングする、講師の話を聞く、生徒同士インタビューし合う。音読する。多読する。どれも大事だと思います。でもやっぱり従来の大人向け日本語学習であまり本格的にやっていなかったことこそ、もっとチャレンジしたいと思うのです。
リラックスした休憩時間やふとしたときに、多少、例文をつぶやいたり、好きな会話表現をつぶやいたりすることはあってもかなり稀です。ましてや文型をつぶやいたりすることなどありません。
でも歌ならあるのです。逆に強制されなくてもテストに関係なくても、学習者たちは進んで楽しみながら口ずさみ、その間、貴重な日本語脳に切り替わる時間を自ら作り出しているのです。
このセブ島で、どうしたら教室外でも日本語に触れられるのだろう・・・。そう考えた時、歌(J-POP)は最強ツールのひとつだと確信しました。教室外に広がる、つながる日本語学習。そして楽しみながら自律学習が続けられるきっかけづくり。もっともっとこの部分を掘り下げて考え、どんどん授業で試していきたいと思っています。