模擬授業(読解):写真をたくさん使って、本文を何度も精読してもらう日本語リーディング

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どうも。Nunoです。今日はここ最近よくやっている読解授業の流れを紹介したいと思います。

ここのところ、常々「読む前の予備活動がとても大事だ」と考えていまして、よくいわれる《スキーマの活性化》に加えて【貪るように読む態勢をつくってあげる】ために、読む前タスクをちょこちょこと工夫したりしています。

なぜなら、「教科書を開けて本文をいきなり読み始める」のと、「十分内容を(自分なりに)イメージしてから目的を持って読む」のとでは、目を通して脳へと入っていく《文字の入り方》が全然違うと考えるからです。

前者は教科書の日本語の文章が平面的に見え、後者は立体的に見える、とも言えるかもしれません。

ぼくの担当している初級の読解の時間は、学習対象の語彙や表現がたっぷりと入った読み物を使って、日本語の文章構成や流れにとにかく慣れてもらうことが目的です。

そのためには生徒に何度も読んでもらう工夫が必要です。もしJLPT対策なら、先に問題と答えを把握して本文をSkimming & Scanning する訓練をすると思うのですが、それはまさに試験のテクニックをマスターするための「訓練」ですので、普段の読解の時間はより読んでもらうことにフォーカスします。

ストーリーをメインに、対象文型をさりげなく意識させる

ちょうど先週やった授業が「連体修飾節の使い方」。みんなの日本語でいうと第22課です。

英語の関係代名詞で名詞を修飾するやり方と正反対のため、御多分に漏れずフィリピン人もこの連体修飾がとても苦手です。(いつもさっと簡単に説明した後、いくつか例題を出して試しに連体修飾を使った日本語の文を作ってもらうのですが、クラスで7-8割の生徒はここで日本語の文の構成がぐちゃぐちゃになります:)。)

ただ、延々と文を作る、文法のパターンプラクティス(理屈の勉強)を続けていると、だんだん脳の浅い部分しか働かなくなってしまうので、実際の日本語の海へ出て泳いでもらいます。

そのために、(逆説的ではありますが)ストーリーのほうに目を向けさせつつ、その意味と内容を理解するために《連体修飾節が入った文章を何度も読む》というアクティビティを実行します。

教材は、みんなの日本語準拠の副教材「初級で読めるトピック25」第22課 テレビ放送 です。内容は、初めてテレビ放送をした1953年から、普及につながるいくつかのイベント(昭和時代の皇太子の結婚式、東京オリンピック)を経て、今ではスマホでどこでも見れるようになったというテレビ文化の移り変わりについて書かれたものです。

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それでは、模擬授業スタートします。

写真をたくさん使った読解 模擬授業

古いTVCMからスタート(YouTubeで古いTVコマーシャルを見せる。内容は1957年のかぜぐすり「ルル」のTVCM。)

T: 映像再生>> さあ、みなさん、ちょっとこれを見てください。(わかりやすいメロディに乗せて、「ルル、ルル、かわいいルル♪ ~」と始まり、簡単な語彙+字幕もついているので何気にうける。)

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T: 発問>> これは何ですか。何のTVCMですか。新しいですか。・・・など。生徒からどんどんキーワードを出させる。(ここで、ある意味、これから何か「テレビ」か「古いもの」かあるいは「薬」に関するものが読み物に出てくることを匂わせる。)

T:次にスライドで、本文に関連する写真群を見せながら発問>> これは 何ですか。誰ですか。いつごろですか。日本語でなんですか。など。ここでも生徒から思いつくキーワードをどんどん拾いながら、併せてこのタイミングで新出語彙もホワイトボードに書いて紹介してしまう。※写真は多ければ多いほどいいと思います。

ここまでが、いわゆる《スキーマの活性化》にあたると思います。そして、次に何度も読むためのアクティビティに入ります。

T:スライドで使った一連の写真を順番通りサムネイルにしてハンドアウトで配布。写真にはそれぞれ番号が振ってある。>> これは今まで見せた写真ですね。全部、これからみなさんに読んでもらう文章に関係するものです。さて、それじゃ、ストーリーを考えてみましょう。どんなストーリーだと思いますか

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それぞれ意見が出始めます。2,3聞いたうえで、ペアでじっくり自分の予想ストーリーを紹介し合ってもらいます(母語でもOK)。この段階で自分の頭の中に自分なりのイメージができあがっています。

T:タスクの指示、ここでようやく読解開始>> じゃ、みなさん、これから本文を読みます。2つのタスクを実行してください。① 写真と関連する文章を見つけてください。見つけたら下線を引いて、対応する写真の番号を記入してください。全ての写真について行ってください。② 自分の予想したストーリーとどこが違ったか、ペアで話してください。⇒ じゃ、読みましょう!

↑ この読解授業のポイントは、まさにここにあります。読む前に【読む姿勢】と【読む目的】が整っています。そして、生徒は、今まで見た写真(ビジュアル)と関連する日本語の文章を探すために、本文を何度も精読します。そして本文全体を眺めながら、自分の予想したストーリーとの相違点を探るために、さらに夢中になって読みます。

T:机間巡視しながら進み具合を確認、写真と本文が合っているか、答えもチェック。

T:(発問)>> ストーリーはどうでしたか。どこに相違がありましたか。(軽く拾っていく)

ここまでが、【内容と意味】に目を向けたものなので、いよいよこれから【文法】=連体修飾に着目してもらいます。

T: 蛍光ペンをひくタスク>> じゃ、みなさん、この本文の中で使われている《連体修飾節》にすべて蛍光ペンを引いてくださいー。引き終わったら、ペアでチェックしましょう。

日本で初めてテレビ放送をした日は・・” から始まり、次々に蛍光ペンを引いてもらいます。ここでも今度は文法に着目してまた本文を読み返すことになります

T:答え合わせをしながら《連体修飾節が入った文章をまるごと》講師が音読していきます(=音としての再インプット)。

T:教材にある読解問題を解く指示>> じゃ、最後に問題もやってみましょう。(これだけ何度も読んでいると、教材の問題はすごく簡単に感じてすぐにできます。)⇒ 終了

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まとめ

いかがでしたでしょうか。これはぼくの考え方でもあるのですが、生徒に<日本語の勉強 = 文法や文型の勉強>と思ってほしくないというベースがあります。

生徒自身の中に、なぜこれを勉強するのか、これを勉強するとどんなコミュニケーションに役立つのか(どんないいことがあるのか)の動機づけがしっかりできていないと、勉強してもなかなか効果が出てきません。

例えば今回は《連体修飾節》が文法テーマだったのですが、それを勉強すること自体が目的ではなくて、みんなで読む本文を理解するために《連体修飾節》という文法知識が必要だということを学習者にわかってほしいのです。

そして日本語教師は、いきなり教科書を開く、ただ読ませる、ただ読解問題を解かせるだけでなく、その前に楽しい動機づけをして【外国語としての日本語を何度も読む】態勢づくりをサポートすることも大切な役割ではないかと思うのです。

そしてこの取り組みが、生徒の自主的な多読へと興味が向かうことを願ってやみません。

じゃ、またーー。

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