どうも、ぬの★セブです。
昨日の晩、月例の #日本語教師チャットに参加しました。テーマは『行動中心アプローチ』。今回も多くの日本語教師の方々の意見や状況をうかがうことができて、とても勉強になりました。
(ぼくが専任講師を担当している学校では、今年2018年2月から教科書「まるごと かつどう A1/ A2」を全面採用していて、現在もうひとつの学校でも同様のシラバスで展開中です。)
ただ実際、『行動中心アプローチ』に基づいて授業をされている講師の方はまだまだ少ないのかな、とも感じました。最終的には<学習者のニーズに合わせて>ということになるので、どこにも万能な授業はないと思いますが・・・。
そんな中で、#日本語教師チャット のQ4で「行動中心アプローチで教えたことがない人は、不安な点、疑問点を教えてください。(質問に回答できる人は回答お願いします。)」というのがありました。
できる範囲でツイッターで回答はしたのですが、全ては、しきれず・・・またツイッターでは説明しきれない部分もあるので、いくつかQ&A形式で追記の回答をしてみたいと思います。
※実際の授業をベースとした回答ですので、概念的でも学術的もありませんが、何かしらヒントになるところがあれば、幸いです。
1.文型や文法は身につくのか?
確かに、行動中心アプローチでの授業は、その場面でどう課題を達成するかというところがキーになってきますので、細かい文法項目は<その行動を通して付随的に学んでいく>という感じです。
ただ、授業の8割~9割を行動中心(縦糸)に充てたとしても、人によって理解度にばらつきが出てくる「日本語の形式」の部分にも少し光を当てて、デフラグをするような「整えの時間(横糸)」もとても大事だと感じています。
ですので、ぼくの場合は授業の終わりの方に、振り返りの一環として、文法チェックの時間を設けています。やり方はさまざまです。例えば、
- 口頭Q&Aでチェック。
- ホワイトボードに、いくつか例文を書いて、文法的気付きを促す。⇒その後、 生徒による例文作成。
- ホワイトボードに、いくつか文法処理用の問題を書いて、みんなで解く。
- 文法にフォーカスした練習問題ハンドアウトでチェック(「げんきワークブック」、みん日「書いて覚える文型練習帳」など)。
などです。Taiwan abeさん(@jptwabe)ともこんなやりとりをしました。
目的は、ロジックを整理することで、文型や文法の勉強を意識させ過ぎないようにしています。いずれにしても、整理の時間を設ける、そして何度もその文型や文法に出会うように授業をデザインすることで定着を図っています。
2.JLPT対策はどうするのか?
試験の対策ということで、試験を解くこと自体に慣れる、制限時間内に終了させる戦略と技術を身につける、間違いやすい項目を意識する、違う答えを取り除く方法を身につける、などなど、【テクニック】と【JLPT語彙・文型】の対策授業になるかと思います。
ぼくが担当しているコースは、初級の4か月タームがメインで、JLPT対策は通常授業とは別に最後の1か月に集中して行うようなカリキュラムになっています。(超ざっくりイメージ)↓↓↓
普段からJLPTを意識した授業にすると、『行動中心アプローチ』とは全く逆の、いわば日本の「受験英語」のような授業になってしまうので、JLPT対策=受講のテクニックを身につけるもの、と割り切って切り離して最後の月にもってきています。
※ 「まるごと」にない、長めのダイアローグについては「げんき」を採用しています。「げんき」のダイアローグを使うことで長めの会話練習の部分を補っています。
3.評価はどうするのか。タスクは達成できても文法や語彙が不正確な場合は?
現在、週一回、Can doのアセスメントを行っています。一応簡単なルーブリックを使って、《その時点で、できるかどうか》の評価をしています。
ポイントは減点式(CANNOT do)ではなくて、加点式ということです。今勤めている学校では、シンプルに、ルーブリックの合計点から星★の数で評価して、教室内に掲示しています。
- ★ Average
- ★★ Good
- ★★★ Excellent
のような感じです。授業の中でCan doのタスクは何度も練習していますので、まず「質問が全く分からない」ということは少ないです。確かに、語彙や語順、助詞や動詞の活用、テンスなどが間違っていることもありますが、講師が聞いていて「達成したいことが理解できれば」加点します。
大事なのは、アセスメントが終了した後に、必ずグループで学生同士、アセスメントの再現とディスカッションをしてもらうことです。★★★ Excellentの生徒と★Averageの生徒同士でどんな表現をしたか確認してもらい、文法等のエラーに関しては、最後に講師がまとめます。
4.変化を嫌う保守的なベテラン教師たちに反対されたらどうするか。
これは大変ですよね・・・。でも最初から学校全体で採用するために孤軍奮闘するよりも、自分の担当授業の活動の時間の中で「そっと」試してみるのがいいと思います。本当に「活動のツール」としてでも『まるごと』は使えると思います。
スモール・スタートで「活動」のタスクとしてCan doを使ってみながら、じわじわ広げていくというのもひとつのすすめ方だと思います。
例えば、これは《店で(服の)買い物ができる》というCan doです。
文型シラバスで、「あります」「ありますか」などを勉強した後の活動の一環で、使えるのではと思います。
まとめ
いずれにしても、『行動中心アプローチ』もひとつの学習スタイルですので、最終的には学習者のニーズに合った方法を選択していけばよいのかな、と思います。実際、ぼくが勤めているセブの学校は2校ともばっちりはまっていて、学習者もちゃんと期待通りのレベルまで到達できているので、試してみる価値はあると思います。
じゃ、またーー。 ↓↓下記は、国際交流基金さんの「まるごと」を使った授業風景です(17分もの)。
・『まるごと 日本のことばと文化』の使い方 ―入門(A1)かつどう編―